お知らせ

【コラム】“まちづくり”って面白い! <第7回> スマート農業と“まちづくり”

 

 三鷹の大沢の地では、200年ほど前の江戸時代後期から、豊富な湧水を利用したわさび栽培が盛んに行われていました。昭和40年代になると市街地化の進展や道路開発などの影響で湧水が減少したこともあり、農産物としての生産は途絶えてしまいましたが、かつてのわさび田には自生化した株が残っていました。

 

 先ごろ、この「三鷹大沢わさび」のDNA鑑定を行ったところ、現在の日本にはほとんど残っていない貴重な在来種であることが判明しました。しかし、長年にわたり株分け法という方法で栽培が繰り返されていたため、花を咲かせて世代を継承する能力が低下していることもわかりました。そのため市では、この希少種の保全に向けて、植物の組織を切り取って培養し、親株の特長をそのまま受け継ぐ苗をつくって成長させる「三鷹大沢わさび」復活プロジェクトを進めています。いわば、バイオテクノロジーを活用した農産物再生の試みです。

 この事業は、これまで農業にあまり関心がなかったという方々も含め多くの市民の皆さんから反響をいただき、プロジェクトには学生から高齢者まで多くの市民ボランティアの皆さまが参加してくださっています。

 

 近年、少子高齢化の進展による労働力不足が全国的な課題ですが、農業の分野で特に顕著に現れています。熟練を要する手作業が多い農業の現場では、担い手の確保と作業ノウハウの伝承が欠かせませんが、それを補うために様々な技術を活用した省力化も必要です。

 現在、国は、最先端のテクノロジーを活用して農業従事者の負担軽減や作業の効率化などを実現するための研究を進めています。例えば、作業の自動化による人的負担の軽減、情報共有の簡易化による熟練者の技術の伝承、センサー等を活用した農産物の育成状況の測定、病害虫情報のデータ活用などです。こうした国の取組みに加えて、東京都では、都市農業の小規模農地でも高収益を上げることができるようにする研究を進めています。

 

 三鷹市においても、緑豊かな環境の礎である都市農地を維持していくためには、地域の都市農業が、先進技術を活用した「スマート農業」として発展・持続していくことが必要となってきます。

 三鷹の農業の未来をどのように描いていくべきか、多くの注目を集めている今回の三鷹大沢わさびの復活プロジェクトを一つのケーススタディとしながら、農業者や多くの市民の皆さまとともに考えていきたいと思います。

【コラム】“まちづくり”って面白い! <第6回> 空き家の利活用による新たな“まちづくり”