政策


「人間のあすへのまち」に向けた歩みとコロナ禍への対応
-この3年半の取り組み、そして市民のみなさんと築きたい未来-

私は平成31(2019)年4月30日に市長に就任してすぐ、未来に向けた新たな施策を展開するため、市の基本計画の改定に着手し、令和2(2020)年3月に「第4次三鷹市基本計画(第2次改定)」をとりまとめました。
 

この基本計画では、施策推進の理念に『市民の暮らしを守り、三鷹の魅力を高める“質の高い防災・減災のまちづくり”』を掲げました。その上で、『成熟した都市の質的向上をめざす“都市再生”』と『ともに支え合う地域社会を生み出す“コミュニティ創生”』を柱とした「高環境」「高福祉」のまちづくり、SDGsの視点をもった「誰一人取り残さない」まちづくりを進めていきたいという考えをお示ししました。

 

その矢先、新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始め、皆さまの生活から日常を奪うとともに、三鷹市政にも今まで経験したことのないような大きな影響を及ぼしました。こうした未曾有の事態の中、市民の命と暮らしを守るのは、基礎自治体としての三鷹市の責務です。そのため私は、計画した施策の実現が大幅に遅れたとしても、また、予定した事業を延期・中止したとしても、何よりもまず、感染症対策を最優先にすべきと考え、市民の皆さまに寄り添ったきめ細かな対応の推進に全力を注いできました。

 

そして今、多くの施策がようやくカタチになりつつあります。いずれもまだ道半ばと言わざるを得えず、大きく実を結ぶにはもう少し時間が必要ではあるものの、市民の皆さまのご理解とご参加をいただきながら、未来のための果実を、丁寧にしっかりと実らせていきたいと思っています。

 

皆さまのさらなるご協力と応援をお願いいたしたく、私の市長としての約3年半の取組みをご紹介します。

1. <都市再生の中核として> 三鷹駅前地区の再開発の推進~
三鷹駅南口中央通り東地区を“子どもの森”に~

三鷹駅南口中央通りとさくら通りとの交差点の東南、「三鷹センタービル」や「さくら通り駐車場・駐輪場」を含むエリア約1.5haが、「三鷹駅南口中央通り東地区再開発事業」の対象区域です。
平成18(2006)年に、地元の地権者が主体となって「三鷹駅南口中央通り東地区再開発協議会」を設立し、UR都市機構や三鷹市も加わって一体的な整備プランを検討してきましたが、なかなか合意形成に至らず、長い年月が経過してしまいました。

 

私は、三鷹のまちの活性化には、三鷹駅前再開発の成功が大きく貢献するものと考えています(もちろんその前提として、三鷹駅を中心とした市内の公共交通網の再編も必須です)。そのため、平成31(2019)年の市長就任直後、新たに“子どもの森”のイメージコンセプトを公表し、地権者の皆さまのご理解とご協力のもとで、前向きな検討を再開させました。ここで言う“子どもの森”は、児童館や公園といった個別具体の施設ではなく、「子どもから始まり、世代を超えてすべての市民が憩える、緑豊かでにぎわいのある空間」とイメージしていただければと思います。
その後、令和2(2020)年度には、今後のまちづくりのコンセプトとして“百年の森”構想を公表し、“子どもの森”から三鷹駅前地区全体に緑とにぎわいを拡げ、やがて市域全体を大きな「緑のまち」とし、もっと住みよく、活力のある豊かなまちを目指していくという考えをお示ししました。
こうしたプランには多くの皆さまからご意見が寄せられ、おおむね好意的に受け止めていただけていることを、心強く思っています。

 

一方、再開発事業の建物計画については、この間、様々な観点から検討を進めてきましたが、“子どもの森”のコンセプトでもある緑の空間を確保するためには、どうしても一部のエリアの建物について、かなりの高層化が避けられないという課題がありました。しかし、私は三鷹のまちに超高層ビルはそぐわないと考えています。多くの市民の皆さまからも、「非常に高い建物は抑えるべき」という意見が寄せられており、令和3(2021)年度に行った市民アンケートでも、同様の傾向が見られました。

 

“子どもの森”のコンセプトを維持しながら、周辺環境に合わせて建物の高さを抑えることを前提とした検討は、UR都市機構との調整を含め、かなりの時間を要しましたが、ようやくここで具現化に向けた絵が描けるところまで辿り着きました。地権者の皆さまのご理解とご協力をいただきながら、できるだけ早期に 、事業区域や施設の機能・配置などを盛り込んだ基本プランをお示しいたします。

 

今後も多くの皆さまから幅広くご意見をお伺いし、できるだけ早く都市計画決定を行い、にぎわいの創出や、防災性の向上、交通混雑の解消など、三鷹の玄関口にふさわしいまちづくりを実現させていきます。

現在の三鷹駅南口中央通り東地区

2. <コミュニティ創生の契機として>新たな参加と協働の実践
~市民参加でまちづくり協議会の活動~

『三鷹市市民参加でまちづくり協議会(愛称:Machikoeマチコエ)』は、令和5(2023)年度に予定している三鷹市基本構想の改正や第5次三鷹市基本計画の策定に向けた、新たな参加と協働の取組みです。

 

三鷹市では、平成11(1999)年から13(2001)年にかけて、市民ボランティアで構成する『みたか市民プラン21会議』と市がパートナーシップ協定を締結し、そこに集ったメンバーが様々な議論を重ねて提案をまとめ、「第3次三鷹市基本計画」に反映させるという市民参加を実践しました。私も当時、市職員の担当責任者として皆さまとご一緒させていただきました。

 

『市民参加でまちづくり協議会』の活動は、この『みたか市民プラン21会議』をさらに発展・進化させようというもので、目指すのは「1万人の市民参加」です。私はそれを、「市民が市民の声を聞いて政策提案を創り上げる」という仕組みで実現できるのではないかと考えました。
協議会に参加してくださる市民ボランティア一人ひとりが、多くの市民の皆さまのまちづくりに対する気づきや思いを丁寧にお伺いしていくというつながりをつくり、様々な意見やアイデアを受け止めながら政策提案をまとめていくというプロセスによって「1万人の市民参加」を実現しようという試みです。

 

令和3(2021)年6月、こうした取組みにご協力いただけるメンバーを募ったところ、想定をはるかに上回る400人超の方々にご参加いただくことができました。同年10月に設立総会を開催し、11月には活動拠点として、三鷹駅前に新たな施設を開設しました。ここでは、幅広い世代の方や、コロナ禍の中で外出を抑制する方にも積極的に参加していただけるよう、ZoomやSlackなどのオンライン環境も整えました。
現在、協議会ではメンバーがいくつかのグループに分かれ、それぞれの政策テーマや、どのような手法で市民の皆さまの声をお伺いしていくかを、鋭意検討しています。そしていよいよこれから、メンバーが市内各所に出向き、皆さまのお声をお伺いする段階に入っていきます。是非、機会をとらえてご意見やアイデアをお寄せいただければと思います。

 

地域社会をつくるのは、行政だけの仕事ではありません。すべての市民の皆さまが、地域社会をともにつくっていく大切なパートナーです。公共の「公」だけではなく、市民の皆さまの「共」が一緒になっていくことで、新たなコミュニティが生まれます。私はこの新たな参加と協働の実践を通じ、今まで以上に厚みと広がりのある市民参加を日常化し、三鷹のまちを魅力ある素晴らしいものにしていきたいと考えています。

市民参加でまちづくり協議会の活動拠点

3. <高環境・高福祉のまちづくりに向けて>

①世界に開かれた平和・人権のまちをつくる

すべての人々が安全で健やかに、そして心豊かに生活できる基盤は「平和」です。そのため私は、平和を愛する人々の心の輪を広げていくための啓発活動に力を入れています。戦争の記憶が風化しつつあると言われる中、戦争の惨禍をくり返すことのないよう、改めて平和の大切さを幅広い世代の皆さまに伝え続けていきたいと思います。市民から寄贈を受けた戦争遺品を展示する「みたか平和資料コーナー」(市庁舎3階)のスペースの拡大や、市民の戦争の記憶を保存し次世代に伝える特設サイト「みたかデジタル平和資料館」の内容の拡充はその一環としての取組みです。

 

そのうえで、今なお根強く残る男女の格差を解消するとともに、性的少数者や外国籍市民など、生きにくさを感じている人々を含めたすべての市民が、自分らしく生活できる風土をつくっていくことも大切です。そこで検討を開始したのが、三鷹市独自の「人権基本条例(仮称)」の制定です。多様性を理解し合い、わかり合い、ともに支え合うことができる豊かで幸せなまちづくりの指針として、多くの市民の皆さまに共感していただけるよう、幅広い市民参加のプロセスを経ながら、深みのある条例にしていきたいと考えています。
また、こうした取組みを推進する拠点施設として、「多文化共生センター(仮称)」の設置に向けた検討も進めています。現在の公益財団法人三鷹国際交流協会の機能を発展させる形で、国籍や民族だけではなく、平和を基礎に、性別、性自認などの違いを超えて、すべての市民がともに生きていくための「交流」「理解」「支援」の拠点として、三鷹駅前地区の再開発事業の中で新たな施設を設置します。

 

なお、令和4(2022)年2月、突如としてロシアによるウクライナへの軍事侵攻が勃発し、大勢のウクライナ人の方々が避難生活を余儀なくされる事態となりました。三鷹市内の都営住宅にも避難者が入居することとなったため、人道的な立場から避難者の生活を支援することとし、三鷹国際交流協会と連携しながら、一時金の支給や生活相談、日本語の学習支援などを行っています。また、避難者を地域社会の一員としてお迎えできるよう、市民の皆さまにウクライナのこと知り、理解していただくための様々なイベントや講座も開催しています。

 

今後も、「世界に開かれた平和・人権のまち」をつくるため、草の根の広がりのある活動を積極的に推進していきます。

みたか平和資料コーナー

②魅力と個性にあふれた情報・活力のまちをつくる

市民生活の充実やまちの活性化、様々な地域課題の解決に向けて、日々進化するAIやIoTなどのデジタル技術は、大きな可能性を持っています。私は令和4(2022)年6月に「スマートシティ三鷹の実現に向けた基本方針」を策定し、特に「防災」「健康増進」「子育て支援」「市民参加」の4つの分野で、デジタル技術を活用した誰もが暮らしやすい魅力的なまちづくりを推進することとしました。また、コロナ禍の中、市民活動の灯を消してはならないとの思いから、公共施設のデジタル環境の整備を、使用が困難な方や不慣れな方のサポートと並行しながら進めています。

 

デジタル化は、行財政改革にも大きな効果をもたらします。三鷹市、立川市、日野市の3市が共同で検討を進め、令和3(2021)年11月から開始した住民情報システムの共同利用は、1市当たりの経費の大幅な削減につながり、三鷹市はここで生じた財源で、公立小中学校の児童・生徒全員に1人1台の学習用タブレット端末を配備することができました。

 

活力のあるまちづくりには、持続可能な地域経済に向けた産業政策も欠かせません。そのため、コロナ禍の中、収入の減少や物価の高騰、感染症対策のための経費の増加など多くの課題に直面している商工業者の皆さまがこれからも操業を継続できるよう、様々な助成制度の創設や相談窓口の開設などのきめ細かな支援に取り組んでいます。また、本年、令和4(2022)年7月には、3年ぶりとなる「みたか商工まつり」の開催を支援し、感染症対策に十分配慮しながら、商工業者と市民の皆さまの絆を取り戻すきっかけとすることができました。

 

都市農地の保全は、三鷹の魅力の一つである「緑」を維持するためにも、地域の防災力を向上させるためにも、非常に重要です。その一助として学校給食での市内産野菜の積極的な使用を進めており、私が市長就任当時、おおむね7~8%にとどまっていた使用率を、現在では20%にまで向上させました。今後は当面30%を目標とし、子どもたちの“食育”にも大いに役立てていきたいと考えています。

 

なお、コロナ禍の中、三鷹市の重要な観光資源であるジブリ美術館が、臨時休館や入場制限などによって大幅な収入減に陥りました。そこで、“ふるさと納税”を活用した運営支援の仕組みをつくり、国内外から幅広く寄付を募ったところ、短期間に約5千万円もの支援金が寄せられました。こうした「手法」の創意工夫は、これからの都市経営にも役立てることができると思います。

 

「情報・活力のまちをつくる」ためには、デジタルデバイドの解消に向けたきめの細かい支援と配慮、「農」「工」「商」業の経営の安定化と継続性の確保、消費者の視点に立った買い物環境の改善など、様々な課題が複雑に絡み合いながら山積しています。これらの課題に全体の見通しを持ちながら丁寧に対処し、「魅力と個性にあふれた」まちづくりを推進していきます。

学習用タブレット端末と教材

③安全とうるおいのある快適空間のまちをつくる

度重なる地震や異常気象による大規模な自然災害に対し、「質の高い防災・減災のまちづくり」は喫緊の課題であり、市民の命と暮らしを守るため、三鷹市が“公助”の取組みに全力を注ぐべきことは言うまでもありません。その一方で近年、“共助”の大切さが改めて認識されています。そこで私は、地域の防災活動の充実と強化を目的に、“共助”をネットワーク化していくための新たな組織として、NPO組織「Mitakaみんなの防災」の設立に向けた準備を進めてきました。令和4(2022)年9月から、防災の意識啓発や情報提供などの活動を開始しており、令和5(2023)年3月には正式な法人組織とします。
またこれと並行して、災害時に要支援者一人ひとりを、“公助”と“共助”の仕組みの中でしっかりと支援していくための、個別避難計画の作成にも取り組んでいます。

 

“公助”の取組みの中で重要なのは避難所の開設ですが、大沢地域の羽沢小学校は、野川の浸水予想区域内にあるため、風水害時に避難所とすることができません。令和元(2019)年10月に発生した台風19号の際に、改めてその課題が浮き彫りになったところですが、それとほぼ同時期に、同じ大沢地域にある国立天文台から、今後の研究費を確保するため、北側の敷地を売却するとの考えが示されました。
そこが民間に売却されれば森が宅地になってしまうのは明らかでしたので、私としては、うるおいをもたらす天文台の森を保全・再生しながら、防災面をはじめとする地域の課題を解決する総合的なまちづくりを連携して進めたいとの申し入れを行いました。天文台もこの考えに賛同してくださり、羽沢小学校を敷地内に移転させることを軸に、近隣の小中学校との連携による魅力ある教育環境づくり、羽沢小学校跡地への商業施設の誘致による買い物環境の改善などの検討を開始しました。
できるだけ早期に、整備スケジュールや敷地内のゾーニング案などの土地利用基本構想を策定するため、まずは自然環境調査と遺跡の試掘調査に着手します。。

 

また、「快適空間のまち」に向けては、公共交通網の再編も必須です。しかし三鷹市の場合、近隣の武蔵野市や小金井市などと異なり、市域の形の影響で効率的な交通網の整備が非常に困難です。これまでも様々な実証実験を行ってきましたが、いずれも成功したとは言えません。そこで令和4(2022)年10月から、改めて、交通不便地域とされる大沢地区と井の頭地区で、ワンボックスカーによるデマンド運行や小型EVバスの実験を行うこととしました。こうした実証運行を通じて、将来の理想的な市域全体の交通ネットワークを検討していきます。

 

「安全」性を確保し、緑豊かな「うるおいのある」まちづくりを進めるためには、市民の皆さま、関係機関の皆さまのご理解とご協力が必要です。皆で手を取り合って、三鷹を「快適空間のまち」にしていきたいと考えています。

小型EVバス

④人と自然が共生できる循環・環境のまちをつくる

戦後からの復興、高度経済成長を経た現代の豊かで便利な生活は、今、自然環境に配慮したライフスタイルへと転換する分岐点に差し掛かっています。このことを地球規模での問題だと他人事として捉えるのではなく、「SDGs」の理念を認識したうえで、自然環境と生活環境が調和した良好なまちづくりに向けて、三鷹市も先導的な役割を果たしていく必要があります。

 

地球温暖化への対策では、国から、令和12(2030)年度までに平成25(2013)年度比で、温室効果ガスを46%削減する目標が示されています。自然エネルギーの活用技術は十分に成熟したとは言えず、風力や太陽光による発電も、安定供給や場所の確保に課題があります。環境への配慮を意識した生活への変化を基礎としながら、高度な知見を有する民間事業者との連携が不可欠です。そのため私は、令和4(2022)年度に「三鷹市地球温暖化対策実行計画」を改定し、災害時のエネルギー施策なども見据えた環境と調和した持続可能なまちづくりを進めています。

 

そんな中、環境問題に関する意識啓発の転機になればと考えているのが、環境省などの主催で令和4(2022)年10月に開催された「星空の街・あおぞらの街」全国大会です。大正13(1924)年に国立天文台が三鷹市に移転し、令和6(2024)年に100年を迎える中、近年、天文台と三鷹市が連携し星空観望会や太陽系ウォーク、「星と森と絵本の家」、「天文・科学情報スペース」など幅広い事業を展開していることが評価され、都市部では非常に珍しい、三鷹市での開催となりました。「100年後の地球~今、私たちにできること~」をテーマに、星空やあおぞら、きれいな水や空気、多様な生物、豊かな自然など、環境のために何ができるのかを市民の皆さまと考えるきっかけにしていきます。

 

環境問題に関しては、ごみの抑制、循環資源の再使用・再利用の視点も重要です。三鷹市と調布市が共同で整備した可燃ごみ処理施設では、ごみの焼却により発生した熱を電力や温水として、三鷹中央防災公園・元気創造プラザで有効に活用しています。不燃ごみ処理施設の更新も計画しており、さらなるごみの減少、資源化にも努めていきます。

 

「人と自然が共生できる循環・環境のまち」づくりは、一朝一夕には実現が困難な長丁場の取組みです。市民、事業者などがそれぞれの役割に基づいて連携・協力していく基盤をつくるとともに、市が率先垂範に努め、時代をリードする先駆的な施策を実行していきます。

星空の街・あおぞらの街 全国大会 in 三鷹市

⑤希望と安心にみちた健康・福祉のまちをつくる

三鷹市は現在、65歳以上の高齢者人口が総人口の21%を超える超高齢社会に入っており、2040年台には30%を超えると推計しています。平均寿命が延びる中、健康上の問題がない状態で日常生活を送ることができる期間、すなわち健康寿命を延ばしていくための施策は喫緊の課題です。今後も増加するであろう認知症の高齢者一人ひとりの尊厳を大切にした支援も重要になってきます。
障がいがある方に対しては、それぞれに応じたきめの細かいサポートが必要です。特に、保護者の皆さまにとっては、親亡き後の不安を少しでも払拭していただくサービス体制の充実が必須であると考えています。

 

また、誰もが生活習慣病にかかる可能性を持っています。予防に重点を置き、一人ひとりのライフステージに応じたサービスを提供していかなければなりません。さらに、自殺や孤独死という不幸な事態を少しでも減らしていくことや、不安定な社会経済状況の中、生活保護を最後のセーフティネットとしつつ、そこに至る前の生活困窮者の自立支援も基礎自治体の大切な役割です。

 

こうした考えのもと、認知症高齢者グループホームの開設支援、高齢者の社会的孤立を解消するための支援と相談体制の拡充、医療的ケアや行動障がいにも対応できる障がい者施設の整備(三鷹市・調布市・府中市の共同事業。令和7(2025)年度開設予定)、障がい者の生活を地域で支える仕組みづくり、休日診療所・休日調剤薬局の整備、生活困窮者の相談体制の拡充など、市民の皆さまに寄り添ったきめの細かい施策を進めています。

 

ところで、平成8(1996)年4月にオープンした「三鷹市立特別養護老人ホームどんぐり山」は、私が市長に就任する前の平成30(2018)年3月に廃止が決定されていました。施設のその後の使途を決定しないままでの廃止でしたので、私はここを、民間企業や大学との連携によるこれからの在宅医療・介護の研究拠点、そして介護の担い手不足を解消しスキルを向上していただくための人財育成の拠点としてリニューアルしたいと考えました。eスポーツやVRなどのデジタル技術を活用し、少しでも気楽に介護予防やリハビリテーションを行っていただけるような機能、さらには老人保健施設などから自宅へ戻る間の、在宅復帰訓練の機能も併せ持ったものとし、令和5(2023)年12月のオープンに向けた整備を進めています。

 

国、都道府県、市町村の役割分担の中、市町村は福祉サービスの主たる担い手となっています。三鷹市でも近年、福祉関連経費が予算額の50%を越えており、今後もこの延びは続いていくものと想定しています。将来にわたってしっかりとした福祉サービスを継続・発展させていくためには財源の確保が必須であり、私は地域経済の発展がその鍵を握っているものと考えています。
まちの活性化が福祉サービスを向上させるという循環をつくりながら、これからも「希望と安心にみちた健康・福祉のまち」づくりを進めていきます。

旧 三鷹市立特別養護老人ホームどんぐり山

⑥いきいきと子どもが輝く教育・子育て支援のまちをつくる

子どもが保育園や学童保育所に入園・入所できるかどうかは、保護者の皆さまにとっては「今現在」の差し迫った問題です。また、これをSDGsの視点からみると、「貧困の解消」「健康と福祉」「ジェンダー平等」「働きがい」「不平等の解消」「住み続けられるまち」「平和と公正」など、多くのゴールにかかわる社会問題でもあります。そのため私は保育園、学童保育所の待機児童ゼロに向け、多様な形態の保育施設の整備や定員の弾力的な運用、きめの細かい空き施設のあっせんなどに努め、令和4(2022)年4月にようやくこれを達成しました。今後も様々な工夫によって、その維持に努めていきます。

 

また、子どもの人権にかかわる事件が、今もなお頻繁に報道されています。行政の対応への批判も後を絶ちません。虐待をはじめとするこうした不幸な事態を少しでも減らしていくためには、市民の暮らしに密着した基礎自治体が率先して子育てしやすい環境を整えていかなければなりません。
特に、保護者の皆さまが育児に悩み孤立することのないよう、様々な相談と支援に対応できる場の充実が必要です。三鷹市ではすでに、子どもの教育に関する悩みごとや困りごとの相談窓口として「総合教育相談室」を設けていますが、これに加え、児童相談所や保育園・幼稚園、小中学校などとの密接な連携のもと、虐待の防止や早期発見・早期対応を適切に行う窓口として「子ども家庭支援センターりぼん」を開設しました。今後もさらに支援の輪を広げ、昨今問題となっている子どもの貧困対応の一環としての子ども食堂の拡充なども含め、丁寧できめの細かい施策を推進していきます。

 

学校教育の分野では、三鷹市が早くから取り組んできた“小中一貫教育”の次のステップアップとして、子どもたちの最適な学びの実現と地域に開かれた学校づくりを進めていきたいと考えています。そのための構想である“学校3部制”は、市立小中学校を地域の共有地“コモンズ”とし、第1部を「学校教育の場」、第2部を「子どもたちの多様で豊かな放課後の場」、第3部を「夜間における市民の生涯学習・スポーツ・地域活動の場」にしていこうというものです。
現在、各小学校で実施している地域子どもクラブのいくつかを、教室なども活用しながら試行的に毎日実施しており、今後、これを順次他の小学校にも拡げるなどしながら、学校を核としたコミュニティ~スクール・コミュニティ~づくりを進めていきます。

 

なお、子育て支援に関しては、令和4(2022)年10月から、0歳から18歳までのすべての子どもの医療費の無償化を実現しました。

 

児童の健全育成は、それ自体が市の施策の重要な目的です。しかしそれにとどまらず、子どもたちの笑顔は人々を元気にし、まちの活性化にもつながります。私はこれからも、「いきいきと子どもが輝く教育・子育て支援のまち」づくりを、“未来への投資”として積極的に進めていきます。

子ども家庭支援センターりぼん

⑦創造性と豊かさをひろげる生涯学習・文化のまちをつくる

平成29(2017)年4月にオープンした「三鷹中央防災公園・元気創造プラザ」は、市民の皆さまの生涯学習やスポーツ・レクリエーション活動の新たな拠点として、耐震性に課題のあった社会教育会館や体育館などを複合化して設置した施設です。
新施設としたことで、従来よりも利用者が大幅に増加し、それにともなって、施設の使い勝手や設備の状態などに対し、様々なご意見が寄せられるようになりました。また、私はこれからの公共施設の再整備に当たっては、各施設を“複合化”するだけではなく、それぞれが有機的に連携し合いながら、より効果的で魅力的な機能を発揮する“融合化”を目指す必要があると考えています。
この点に不十分さを感じていたこともあり、市長就任直後から、本施設の“総点検”を開始しました。この間、市民会議を設置するなどしながら、ハード、ソフトの両面から、”豊かな場づくり“、”魅力的な場づくり“に向けた多角的な検討を行い、その実践・実証を進めています。また、これと並行して、可能な限り施設・設備の改修や運営方法の改善にも取り組んできました。今後も、利用者の皆さまの声をお伺いしながら、さらなる魅力向上に努めていきます。

 

ところで、この「三鷹中央防災公園・元気創造プラザ」の整備プランを検討している段階では、事業費の財源を確保するため、市内の「井口特設グラウンド」を売却することとしていました。しかし、今後市内でこれだけの広さの土地を確保することは困難です。また、これからの都市経営は、公有地を財源確保のために売却するだけでなく、財源確保も含めた広い視野で“活用”していくことが必要です。特に、昨今のたび重なる大規模自然災害や、想定外とも言える新型コロナウイルス感染症の教訓を踏まると、防災・減災のまちづくり、さらには危機管理の視点を持って、土地の有効活用を考えていかなければなりません。
そのため私は、この土地の売却方針をストップさせました。グラウンド機能を一部残すことで防災・減災のための一時避難所を確保するとともに、今後新たな感染症が発生した際の緊急対応にも活用できるようにします。その上で、市内の医療体制の維持・継続と充実を図る観点からの病院の誘致や、平常時の生活の利便性向上と災害時の避難経路の確保に向けた東西通路の整備を行います。現在、こうした内容を盛り込んだ土地利用の基本構想を策定しているところです。

 

なお、三鷹市は多くの文化人たちが暮らした“文化の薫り高い”まちとして、芸術文化施策にも力を入れています。私が市長に就任してからも、三鷹市美術ギャラリーへの「太宰治展示室」の設置、「太宰治文学サロン」のブックカフェ化、「桜井浜江記念市民ギャラリー」の開設などを行うとともに、市内で長年にわたって執筆活動を行っていた故・吉村昭氏の書斎を移設・再現し公開する取組みも進めています。

 

子どもから高齢者まで、市民の皆さまに心豊かな生活を送っていただくため、さらには三鷹の魅力を市内外に発信して市のブランド力を高めるため、これからも「創造性と豊かさを広げる生涯学習・文化のまち」づくりを推進していきます。

三鷹中央防災公園・元気創造プラザ

⑧ふれあいと協働で進める市民自治のまちをつくる

これからのまちづくりは、市、地域、事業者、NPO、学術機関、そして市民の皆さま一人ひとりなど、様々なプレーヤーが協力・連携しながら、地域課題に取り組んで行く必要があります。
三鷹市では昭和40年代からコミュニティ行政に力を入れ、7つの住民協議会や町会・自治会などと協働でまちづくりを進めてきました。これらの団体は、地域福祉や防災など、市の幅広い施策展開にあたって不可欠な存在となっています。
一方で、都市化に伴う人間関係の希薄化などにより、これからのコミュニティを支える人財が不足するなどの課題も顕在化しています。地域が抱える様々な課題を、住民同士の支え合いによる「共助」と「協働」の仕組みの中で自律的に解決していくことができるよう、市民の皆さまの絆を強め、防災力をはじめとした地域の力を向上させていくことが必要です。

 

そのためのきっかけの一つになればと研究・検討を進めているのが、「地域ポイント事業」です。ボランティア活動などに対してポイントを付与し、無償ではなく賃金でもない中間的なポイントというかたちで、地域活動を支える人財の参加を促し、コミュニティの活性化に寄与できればと思います。
また、これを「通貨」として利用できるようにすることで地域経済の活性化を図るほか、市民同士のポイント交換の仕組みを導入することで共助のきっかけにもしたいと考えています。まずは令和4(2022)年12月から、一部のボランティア活動にポイントを付与し、一部の公共施設での利用料金の決済や記念品との交換など、試行的な形で事業をスタートし、順次、幅広い活動へのポイント付与、さらには市内店舗等での使用などにもつなげていきたいと考えています。

 

ところで、これからの自治体経営を考えるに当たっての最も大きな課題は、高度経済成長期に建設され、集中して更新時期を迎えている公共施設です。施設の長寿命化や建替え、さらには将来を見据えた再編などを、防災の視点を基軸としながら総合的に考えていく必要があります。そのため、私は市長就任直後から、財政面での見通しを含めた公共施設の維持保全計画の策定に着手し、ようやくそれがまとまりつつあります。

 

なお、私は先の選挙で、市庁舎の建替えは緊急課題ではなく、たとえ建て替えるにしても税金を使わない資産活用を考えるべきであることを、皆さまに訴えさせていただきました。この間、様々な研究・検討を行い、民間活力の導入やデジタル技術の活用による規模のコンパクト化、法規制の緩和、さらには将来的な資金の回収などの工夫により、実質的に財政負担を生じさせない建替えが三鷹の地でも可能であることを検証しました。今後、その実現に向けた条件整備を進めるとともに、振り向けられる職員力の状況なども見定めながら、建替えの時期を調整していきます。

 

引き続き、22世紀を見据えた持続可能な自治体経営を、「ふれあいと協働で進める市民自治のまち」づくりを基軸に進めていきます。

ふじみ衛生組合の煙突から三鷹駅方面を望む

4. <市民の命と暮らしを守るために>

新型コロナウイルス感染症対策

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた令和2(2020)年3月からこれまでの間、三鷹市独自の支援策を進めるとともに、国や東京都の施策を実施するため、32回に及ぶ補正予算を編成しました。感染症対策の総事業費は350億円、事業数は350件に上ります。

 

ここではその主なものをご紹介します。

<医療支援>

  • 三鷹市医師会との連携や、杏林大学病院の協力などによるワクチンの円滑な接種
  • 三鷹市医師会と連携したPCRセンターの設置と運営
  • 市内医療機関に対するPCR検査費用の助成
  • 新たに感染症病床を確保する医療機関を支援するための助成
  • 医療従事者の処遇改善に向けた助成
  • 電話・オンラインでの遠隔診療や往診を行う医療機関への助成

<感染者等の支援>

  • 自宅療養者相談支援センターを設置し、食料支援、相談、パルスオキシメーターの貸与などを実施
  • 感染者の家族のためのショートステイ施設の確保

<市民の生活支援>

  • 全ての世帯を対象とした、国の緊急経済対策に基づく「特別定額給付金」などの迅速で円滑な給付
  • 生活困窮者への自立支援金や住宅確保給付金の給付
  • 国民健康保険税や介護保険料、後期高齢者医療保険料の減免や軽減措置、下水道使用料の支払猶予

<子ども・子育て家庭の支援>

  • 国の「子育て世帯への臨時特別給付金」、「ひとり親世帯臨時特別給付金」などの円滑な給付
  • 国や東京都の制度の対象とならない子どもへの、市独自の「子どものための給付金」などの給付
  • 保育施設及び学童保育所の登園等自粛要請期間の保育料の減免と、減収となった保育施設の運営支援
  • 保育施設の支援と従事職員の処遇改善
  • 出産に向けての子育て応援ギフトの拡充
  • 小中学校生が家庭でオンライン学習ができるよう、自立学習プログラムを提供
  • 個別最適化された学びの実現に向け、児童・生徒に1人1台学習用タブレット端末を配備
  • 保護者負担の軽減を図るため、学校給食費の一部を公費負担とするとともに就学援助の対象者を拡充

<高齢者・障がい者の支援>

  • 「敬老のつどい」の中止に伴い、市内飲食店で利用可能な「敬老お食事クーポン券」を配付
  • 重症化リスクの高い高齢者に向けて、季節性インフルエンザワクチン接種を公費で負担
  • 外出機会が減少する中、健康維持と交流の機会とするため、オンラインでの介護予防講座を開催
  • 介護及び障がい福祉事業所の支援と従事職員の処遇改善

<市内事業者の支援>

  • 三鷹商工会と連携して経営相談窓口を設置
  • 資金繰り支援のため、不況対策緊急資金等の要件を緩和
  • 事業活動継続を支援するため、中小企業や小規模事業者に給付金を支給
  • 飲食店への支援と学生等の就労支援を結び付けた宅配サービス「デリバリー三鷹」を実施
  • 飲食店等が取り組む感染症対策の経費を助成

<協働事業者の支援>

  • ふるさと納税を活用した寄付を国内外から募り、三鷹市立アニメーション美術館の経営を支援
  • コミュニティバスや川上郷自然の村、三鷹産業プラザの減収を補填し、協働事業者を支援

<地域経済の活性化と市民生活の応援>

  • プレミアム付商品券事業の実施
  • 三鷹商工会が実施する地域応援商品券事業を支援

<感染予防のための環境整備>

  • 非接触型行政手続きの基盤となるマイナンバーカードの普及・促進
  • 市民課総合窓口へのキャッシュレス決済、セミセルフレジ、混雑状況確認システムの導入
  • 市役所窓口にパーテーションや対話支援システム機器を設置
  • 感染拡大初期の段階で、マスクやアルコール消毒液、非接触型体温計等を調達し、公共的な施設へ配布
  • 日本感染症学会指導医・専門医の水野泰孝医師を三鷹市感染症対策アドバイザーに任命

新型コロナウイルスワクチン接種会場(元気創造プラザ内)