

私の三鷹市長としての1期目(平成31(2019)年4月30日~令和5(2023)年4月29日)は、新型コロナウイルス感染症との闘いでした。未曽有の事態の中、まずは市民の皆様の生命と暮らしを守ることが最優先と考え、様々な感染症対策に取り組んできました。そのため、選挙で皆様にお約束した施策が思うように推進できませんでしたが、かえって様々な取組みについてじっくりと考え、多方面からのご意見をお伺いし、市の職員とも議論を重ねることで、しっかりとしたプランを練り上げることができました。
2期目(令和5(2023)年4月30日~令和9年(2027)年4月29日)の任期に入り、コロナ禍も終息を迎える中、ようやく新しいまちづくりの再スタートを切ることができます。令和6(2024)年3月には、「三鷹市自治基本条例」に基づく市の最上位計画として、新たな「三鷹市基本構想」を策定し、同年6月には、基本構想の実現を図るため、『まちの声をカタチにして実践する三鷹の新時代!』をビジョンに掲げる「第5次三鷹市基本計画」を策定。「あすへのまち三鷹」に向けて私が最重要施策としている三鷹駅前地区の再開発をはじめ、様々な取組みが皆様に見える形で動き出します。
人が「つながり」「支え合い」「活躍し」「集う」まちをつくり、それを子どもたちやその先の世代に引き継いでいくため、コロナ禍の経験、さらには令和6(2024)年1月に発生した能登半島地震の教訓を踏まえながら、「高環境・高福祉」のまちづくりを着実に進めていきます。
1 日々の暮らしの基盤となる平和・人権のまち
2 魅力あふれる活力・にぎわいのまち
3 地域の特性が生きる緑豊かで快適空間のまち
4 生命と暮らしを守る防災・減災・安全安心のまち
5 持続可能な社会を実現する環境・循環のまち
6 誰もが安心して暮らせる健康・福祉のまち
7 個性が輝き笑顔あふれる子ども・教育のまち
8 心豊かに生きがいを高める生涯学習・スポーツ・芸術・文化のまち
9 いきいきと暮らせるコミュニティ・自治のまち
平和への思いを次世代へと継承し、いかなる理由によっても誰もが不当な差別を受けることがない、世界に開かれた一人ひとりが尊重されるまちをつくります。
〇 平和
戦争や紛争がないということだけでなく、貧困、飢餓、差別、地球環境などの問題にも目を向けた「積極的平和」の視点に立ち、近隣自治体や関係機関との連携を密にしながら、基礎自治体ならではの「草の根」の平和活動を進めます。市民の皆様の平和への意識を一層育み、一人ひとりが平和を願い、日常生活の中で自分ができることを考え行動する「平和文化」を醸成していきます。
〇 人権
「人権を尊重するまち三鷹条例」(令和6年3月制定)に基づき、家庭、職場、学校、地域、インターネット上など、あらゆる場面で一人ひとりの個性と自由が尊重される、誰もが暮らしやすいまちの実現に向けて、啓発活動に力を入れるとともに相談体制等を充実します。また、子どもや高齢者の権利・尊厳に目を向けた条例の制定にも取り組みます。
〇 男女平等参画
就労女性の増加を踏まえたジェンダー平等の推進、多様なキャリア形成の支援、柔軟な働き方への環境整備に取り組むとともに、困難な問題を抱える女性への支援、DⅤやハラスメントの未然防止と早期発見に努めます。また、市独自のパートナーシップ宣誓制度の運用などにより、性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、誰もが自分らしく生きることができるまちづくりを進めます。
〇 国際化
日本語の学習支援、相談機能の充実、適切な情報発信、災害時の支援体制の強化など、外国籍市民の生活を支援するとともに、地域活動への参加の機会を創出し、様々な国籍や文化の人々が安心して共生できる、国際的なまちづくりを進めます。また、こうした活動の拠点として、「多文化共生センター(仮称)」の整備に向けた検討を、三鷹駅前地区再開発事業の進捗に合わせて進めていきます。
<みたか平和資料コーナー(市庁舎3階)>農業、工業、商業等の地域産業や都市型観光が活力をもって発展し、魅力にあふれ人が集う、にぎわいのあるまちをつくります。
〇 都市農業
農産物の供給のみならず、防災、景観形成、環境保全、体験学習など、地域社会の中で様々な機能をもつ都市農地・都市農業を次世代に継承していくため、農地の保全と利用の促進、農業経営の改善と担い手の確保・育成、農とのふれあいの場の創出、学校給食での市内産農産物の使用拡大など、「農のあるまちづくり」を積極的に推進していきます。
〇 地域経済
地域経済の活力ある発展に向け、商店会の活性化、都市型産業の起業・創業、中小企業の経営改善、多様な働き方に応じた就労の支援などに力を入れていきます。時代の変化に的確に対応しながら地域の人的・技術的・経済的資源等を有効に活用し、市民の皆様が地域の魅力を体感でき、市内外から人が集う、創造性と付加価値性の高いまちをつくります。
〇 都市観光
みたか都市観光協会を中心に、三鷹の森ジブリ美術館や山本有三記念館、国立天文台など、市内に点在する魅力的な観光資源を活用し、にぎわいの創出と魅力の発信に努めます。また、地域の観光資源を磨き上げて効果的な情報発信に努めるとともに、三鷹ゆかりの特産品を生かした魅力的なお土産品を開発するなど、まちの認知度を高め、観光客の訪れを促進する活動を積極的に展開します。
<みたか観光案内所>自然と調和した景観や、道路・交通環境が充実した、より緑豊かで快適な都市基盤をもつ、うるおいと利便性に満ちたまちをつくります。
〇 都市再生
三鷹駅前地区再開発の段階的な整備、国立天文台敷地内への小学校の移転を軸とした大沢地区の安全性と利便性の向上、三鷹台駅前周辺地区の魅力向上とにぎわい創出の検討、井口グラウンド(仮称)の再整備と市内病院の誘致、三鷹幼稚園跡地の利活用、上連雀三丁目暫定集会施設用地の利活用など、各地域の特性を生かしながら、災害に強く強靭で、魅力ある持続可能なまちづくりを推進します。
〇 道路
幹線道路である都市計画道路の整備を進めるとともに、生活道路である市道について、東八道路延伸の影響を受けている牟礼地区の交通安全対策や、消防活動困難区域の拡幅整備などに取り組みます。また、老朽化が進む宮下橋の架け替えをはじめとする橋梁整備、自転車走行空間や歩行空間の確保、バリアフリーに配慮したみちづくりなど、安全で快適な道路ネットワークづくりを進めていきます。
〇 住環境
市民の生活の場である“まち”を緑豊かで良好なものにしていくため、居住機能と都市機能の立地適正化をはじめとする地域特性を生かした土地利用の誘導、三鷹らしい景観づくり、都市計画制度の活用による産業と調和した住環境の形成などを推進します。また、空き家の利活用や住宅の耐震化支援、住宅セーフティーネット制度を活用した住宅確保要配慮者への居住支援にも取り組んでいきます。
〇 交通環境
市民の利便性の向上とまちの活性化に向け、路線バス、コミュニティバス、AIデマンド交通のネットワークによる地域公共交通の見直しを行うとともに、自動運転や超小型モビリティなどの技術革新を視野に入れたこれからの公共交通環境の研究を進めます。また、三鷹駅南口駅前広場の交通混雑解消や、自転車の事故防止に向けた環境改善・啓発活動などにも取り組んでいきます。
〇 緑と公園
三鷹の原風景である緑と水の保全・再生・創出に向け、農地や保存樹木等の保全対策を進めながら、牟礼の里公園から玉川上水までを連続した農空間とするため、「牟礼の里農園(仮称)」を整備します。また、市内の公園が持続可能で誰もが楽しく快適に利用できるものとなるよう、借地公園の公有地化やインクルーシブ遊具の設置、かまどベンチをはじめとする防災施設の整備などにも取り組みます。
<三鷹駅前地区再開発のイメージ>様々な自然災害や多様化する犯罪から、市民一人ひとりの生命と暮らしを守るまちをつくります。
〇 防犯
安全で安心して暮らせるまちづくりに向け、市民・事業者・警察等の関係機関と連携しながら、安全安心・市民協働パトロールの拡充、防犯キャンペーンの推進、安全安心メールを通じた適切な情報発信、防犯カメラの設置と維持管理、高齢者の特殊詐欺被害防止に向けた自動通話録音機の貸与などに取り組みます
〇 防災・減災
災害から市民の生命と暮らしを守るため、防災関係機関との連携や情報伝達システムなどの危機管理体制を強化するとともに、備蓄品の計画的な整備・更新、災害用トイレの拡充配備を進めます。また、NPO法人Mitakaみんなの防災と連携した啓発や防災教育、地域の自主防災活動団体の支援、災害時における在宅生活支援施設の拡充などにより、自助・共助による防災力の強化に努めます。
〇 消費者保護
インターネットの利用による契約トラブルや高齢者を狙った悪質商法などの被害が後を絶たない中、市民一人ひとりに「賢い消費者」としての意識をもっていただけるよう、キャンペーン活動などを通じた啓発や、小学生から社会人に至るまでの体系的な消費者教育を推進します。また、地域包括支援センター等と連携しながら高齢者の見守り環境と被害防止対策の充実を図ります。
<三鷹市防災キャラクター「じじょまる」> 地球環境保全のため、人と自然の共生や自然と暮らしの調和に向けて地域から取り組む脱炭素型・循環型のまちをつくります。
〇 環境
2050年のゼロカーボンシティ実現を目指し、市が率先して、事務事業に伴う温室効果ガスの削減に努めながら、公共施設の高断熱化や設備機器の高効率化を推進します。また、市民向けの講座・顕彰などの啓発活動の積極的な推進や、新エネルギー・省エネルギー設備の設置に対する助成制度の拡充などによって、省エネルギー行動の促進と環境負荷の少ない設備の普及を図ります。
〇 ごみ処理
ごみの発生抑制・排出抑制に向け、3R(リユース、リデュース、リサイクル)の取組みを更に強化するとともに、サーキュラーエコノミー(循環経済)の視点から、製品プラスチックのリサイクルを進めます。また、高齢者・障がい者のごみの排出支援や、災害時を想定したごみ処理体制の確保などについても検討を進めていきます。
〇 下水道
安定した下水道機能の確保に向け、下水道管路施設の耐震性の調査と耐震化工事を進めます。老朽化が進む東部水再生センターについては、長寿命化対策を行いながら、東京都の流域下水道への編入に向けた関係機関との調整を行っていきます。また、都市型水害に備え、民間施設等への雨水浸透施設の設置の誘導、建物の浸水被害の防止・軽減のための止水板設置工事への助成などを進めます。
<クリーンプラザふじみ>一人ひとりに寄り添いながら暮らしを支援し、地域で支え合う、誰もが安心して健康に暮らせるまちをつくります。
〇 地域福祉
少子高齢化や核家族化、単身世帯の増加、8050問題など、社会問題が多様化する中、様々な福祉課題の相談に応じ、必要な公的サービスや共助の活動につなげる、包括的な支援体制を構築します。災害時に支援が必要な高齢者や障がい者に対しては、避難所の環境を整えるとともに、要支援者がスムーズに避難できるよう、一人ひとりの事情に合わせた個別避難計画を作成していきます。
〇 高齢者福祉
令和5(2023)年12月にオープンした「福祉Laboどんぐり山」で、研究機能、研修機能、生活リハビリ機能を有機的に連携させながら、これからの在宅医療・介護のモデルを構築していきます。認知症施策の総合的かつ計画的な推進にも力を入れ、認知症にやさしいまちに向けた条例を制定します。また、福祉住宅の見直しを図る中で、幅広い高齢者の住環境の支援策についても検討を進めます。
〇 障がい者福祉
障がい児・障がい者の生活と就労、家族の支援など、ライフステージに応じた切れ目のない地域生活の支援策を充実させていきます。また、調布市・府中市と連携し、調布基地跡地に、重度心身障がい者等と重度知的障がい者のための施設を整備します。障がいに対する理解の促進と障がい者の権利保障、福祉人材の確保・定着に向けた環境整備にも力を注いでいきます。
〇 生活支援
健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度の適正な運用と受給者の自立支援の充実、生活困窮者のための生活・就労支援、住宅確保要配慮者への支援など、一人ひとりに寄り添ったサポートを通じて、ライフステージ全体を見通した自立の助長を図ります。あわせて、国民健康保険や後期高齢者医療制度の適正な運用に努めます。
〇 健康増進
栄養・食生活の改善、こころの健康、歯・口腔の健康に向けた啓発や、生活習慣病の予防、がんをはじめとする各種健康診査・検診の充実など、健康づくりと疾病予防を両輪に据えた取組みを推進します。コロナ禍を踏まえた感染症対応力の向上としては、平時から医師会等の関係機関との連携体制を強化するとともに、保健所との人事交流や研修について、東京都との調整を進めます。
<福祉Laboどんぐり山>子育てや教育の環境が充実し、未来を自らの力で切り拓き歩んでいく子どもの成長を地域全体で支え、育むまちをつくります。
〇 子ども・若者・子育て支援
子どもの人権を尊重する条例の制定を進めながら、切れ目のない包括的な子育て支援を充実させていきます。また、子どもや若者の居場所づくりや、保育園機能の充実による身近な在宅子育て支援の拠点づくりなど、地域ぐるみで子どもと子育て家庭を支える環境を整えます。入園児が減少傾向にある幼稚園の運営支援や、学童保育所における定員拡充と医療的ケア児の受入れなどにも取り組みます。
〇 教育
人間力と社会力を主体的に発揮できる子どもたちを育成するため、教育内容の充実を図りながら、義務教育学校の制度の活用も視野に入れ、小・中一貫教育を充実させます。また、学校を地域の共有地「コモンズ」とする学校3部制の推進に努めるとともに、安全安心で快適な教育環境の整備を計画的に推進していきます。市内産野菜の学校給食での利用促進や、給食費の無償化にも取り組みます。
<学校給食>芸術・文化活動の支援、学びとスポーツの環境の充実により、一人ひとりの創造性と豊かさをひろげ、心と体の健康を高めるまちをつくります。
〇 生涯学習
生涯学習センターを拠点として、全ての人が学び続けられる学習環境を整備するとともに、三鷹ネットワーク大学などとの連携のもと、リカレント教育をはじめとした学習者の学びの段階に応じた多様な機会の確保と情報発信に努めます。また、生涯学習を通じて習得した学習の成果を地域社会に還元していく「学びと活動の循環」の仕組みを構築していきます。
〇 図書館
人と本と情報がつながり、市民に役立つ身近な図書館の実現に向け、電子書籍を含めた資料の拡充、職員のレファレンス力の向上、学校図書館やコミュニティ・センター図書室との連携など、図書館サービスの向上を図るとともに、図書館が市民にとって身近になるよう、情報発信を強化します。あわせて、居場所としての図書館の実現に向けた検討を進めます。
〇 芸術・文化
「文化の薫り高いまち三鷹」を目指し、ゆかりの文化人顕彰事業や、令和6(2024)年3月にオープンした「吉村昭書斎」の魅力ある運営に努めるとともに、三鷹駅前地区再開発事業の中で「太宰治文学施設(仮称)」の設置を検討します。また、「三鷹まるごと博物館」事業のこれからのあり方の検討や芸術文化の担い手の育成、誰もが芸術文化に触れられる環境づくりにも取り組んでいきます。
〇 スポーツ
心と体の健康都市づくりに向け、運動へのきっかけづくりと運動習慣の定着、ライフステージやライフスタイルに応じたスポーツ機会の提供、障がい者スポーツの普及と障がい者理解の促進など、誰もがスポーツに親しみ、楽しめるよう、積極的な事業展開を図ります。スポーツ施設に関しては、井口グラウンド(仮称)の再整備や大沢総合グラウンドの改修などに取り組みます。
<吉村昭書斎(内観)>人と人、人と地域がつながり、公正で効率的かつ透明な自治体経営を基盤とした、市民満足度の高いまちをつくります。
〇 コミュニティ創生と参加と協働
時代やニーズに即したコミュニティの実現に向け、コミュニティ・センターや住民協議会の新たな役割と機能を検討するとともに、NPO法人みたか市民協働ネットワークとも連携し、地縁型やテーマ型のコミュニティ活動をデジタル技術も活用しながら支援します。あわせて、地域ポイントの活用などによって、参加と協働のまちづくりを積極的に推進していきます。
〇 自治体経営と行財政運営
時代の潮流に対応できる持続可能な自治体経営の実現に向け、柔軟で機動的な組織づくりや人財育成、適正な事務の執行、サービスの質の向上を視野に入れた行財政改革を進めます。また、公共施設の適切な維持管理と保全に注力するとともに、建替え・再編に当たっては、複合化・多機能化・融合化などを推進します。これからの時代を見据えた広報のあり方についても検討を進めます。
〇 デジタル化
市民生活や社会経済活動の環境変化に迅速に対応するため、AIやデジタル技術を活用した行政改革(DX)を進めます。行政手続のデジタル化推進やオンライン手続の拡大、デジタルデバイドの解消、さらには国の情報システムの標準化・共通化への対応を図るとともに、庁舎のフリーアドレス化等を含む効率的な業務体制を構築し、市民サービスの向上と情報セキュリティの強化に取り組みます。
<ふじみ衛生組合の煙突上から三鷹駅方面を臨む>